1.調査概要
本調査「大学生の産学官連携事業への参画促進のための基礎的調査」は、千葉市・市原市にキャンパスが所在する11大学・短期大学で構成される「ちば産学官連携プラットフォーム」が、2018年9月20日(木)から9月26日(水)までの期間に実施したアンケート調査である。 アンケートの調査対象となったのは、「ちば産学官連携プラットフォーム」の参画校のうち、IR調査協力校の学生270名(主に1年生)である。アンケート回答者の学年と性別の内訳は以下の通りである。
(1)アンケート回答者の性別
(2)アンケート回答者の学年
アンケート調査対象者には、以下の本調査の目的を伝えるとともに、本調査では「学籍番号」や「氏名」等の個人情報はお聞きしませんので、個人の情報が特定される形で公表されることはないことを説明した上で、本調査の結果が「ちば産学官連携プラットフォーム」のWEBページで公開される予定であることに了承をした学生がアンケートに回答した。
本調査の目的は次のとおりである。
- 日頃、学生が学修時間、サークル、アルバイト、地域活動等に充てている時間について調査することにより、今後の産学官連携の協働事業を企画する上で、適切な「活動量(時間)」を検討し、自治体や産業界との協議の参考にすること。
- ちば産学官連携プラットフォームの事業を企画するために、学生のニーズを把握すること。
1.学生の「活動量(時間)」に関する調査
まず、今後の産学官連携の協働事業を企画する上で、学生の適切な「活動量(時間)」を検討し、自治体や産業界との協議の参考にするために、学生の学修時間、サークル、アルバイト、地域活動等に充てている時間について調査した。なお、全ての質問が2018年度前期期間中の活動量について質問をしている。 学生が2018年度前期期間に履修した授業科目数については、約3割の学生が9科目であり、次に14科目、12科目と続いた。これは各校の履修登録科目数の上限(キャップ)が異なることによるバラツキである。「ちば産学官連携プラットフォーム」において、複数の大学・短期大学間で、学生の教育活動に関する共同の取り組みを実施する際には、各校の履修登録科目数の上限に関する情報を共有しておくことが望ましいと考えられる。
また、回答者の中には、17科目以上を選択した学生が8.15%であった。この点は、各校の履修登録科目数の上限について確認するとともに、学生の履修行動を確認する必要がある。または、「単位」と勘違いをして回答をしている可能性も考えられる。
各校の授業時間が1科目90分で、週一回の授業を想定した場合、学生が授業科目に出席して学修する時間は、9科目で週に13.5時間(週5日平均で1日当たり2.7時間)、12科目で18時間(週5日平均で1日当たり3.6時間)、14科目で21時間(週5日平均で1日当たり4.2時間)である。
また、「単位の実質化」を踏まえれば、事前事後学習も含め学生が学修に充てる時間は、9科目で週に40.5時間(週5日平均で1日当たり8.1時間)、12科目で54時間(週5日平均で1日当たり10.8時間)、14科目で63時間(週5日平均で1日当たり12.6時間)である。このように、当然ながら、学生にとって最も大きなエフォートは授業科目に係る学修時間であることが明らかとなる。 ここで、学生は授業に係る予習・復習に充てる学修時間と授業以外のことで勉強に充てた学修時間について調査をすると以下のような結果となった。
まず、授業に係る予習・復習に充てる学修時間で最も多かったのが60分未満(65.19%)であり、60分以上90分未満(24.44%)、90分以上120分未満(6.67%)と続いている。「単位の実質化」の観点から考えると、これは「ちば産学官連携プラットフォーム」の参画校だけの問題ではなく、全国の大学・短期大学の課題であると言えるが、「授業に係る予習・復習に充てる学修時間」の確保は大きな課題であると言える。産学官連携の協働事業を通じた学生への「魅力的な学びの場」を提供することを考えれば、授業と連関する学修内容を提供することで、学生の学修時間の確保にもつながる可能性があると考えられる。
(1) 授業に係る予習・復習に充てる学修時間(1科目当たりの平均時間)
次に、授業以外のことで勉強に充てた学修時間を確認すると、最も多かったのが1時間未満(55.19%)であり、次に1時間以上2時間未満(24.44%)であり、3時間以上と答えた学生は11.48%であった。この点は、1年生の段階から授業以外の国家試験、免許取得等に学修時間を充てている学生が一定割合いることを示唆している。
(2) 授業以外のことで勉強に充てた学修時間(週の平均時間)
なお、授業に係る予習・復習に充てる学修時間と授業以外のことで勉強に充てた学修時間との間の相関値を確認すると、2つの変数の間では有為な相関関係は確認できなかった。 ここで学修面以外の点についても確認してみる。 まず、部活動やサークルの活動の充てた時間を確認すると、1時間未満が最も多く46.67%を占めている。なお、1時間未満のカテゴリには、部活動やサークル活動をしていない学生も含まれる。次に、6時間以上が14.44%、4時間以上5時間以内が10.0%と続いている。アンケートを回答した学生の内、半分以上の学生は何らかの部活動やサークルの活動を関わっていることがわかる。
(3) 部活動やサークルの活動の充てた時間(週の平均時間)
次に、地域活動やボランティア活動に充てた時間を確認すると、1時間未満が最も多く74.47%を占めている。なお、1時間未満のカテゴリには、地域活動やボランティア活動をしていない学生も含まれる。
(4). 地域活動やボランティア活動に充てた時間(週の平均時間)
次に1時間以上2時間以内の学生が13.70%、2時間以上3時間以内が3.33%、6時間以上も3.33%と続いている。この結果から、多くの学生は地域活動やボランティア活動をしていなかったり、時間を充てていなかったりすることが明らかになる一方、地域活動やボランティア活動に多くの時間を費やしている学生が存在することも明らかとなる。 最後にアルバイトに充てた時間を確認すると、10時間以上20時間以内が31.48%と最も多く、1時間以上10時間以内(24.44%)、1時間未満(21.48%)と続いている。なお、1時間未満のカテゴリには、アルバイトをしていない学生も含まれる。
(5). アルバイトに充てた時間(週の平均時間)
またアルバイト時間について、1日当たりの平均時間(週7日)で見てみると、最も多いのは、約4.29時間、次に約2.86時間である。つまり、もちろん、土曜日や日曜日等の休日に長時間のアルバイト入れるなど、学生なりにエフォートを工夫していることも想定されるが、平均すると1日当たり約3時間から5時間分の時間をアルバイトに費やしているという学生像が見えてくる。 ここで、授業に係る学修時間と、部活動やサークル、地域活動やボランティア、アルバイトに充てた時間との相関値を確認すると、ほとんど相関関係は無かった。 また授業に係る学修時間と、授業以外の学修、部活動やサークル、地域活動やボランティア、アルバイトに充てた時間について、それぞれ単回帰分析を行うと、いずれも調整済みの決定係数は1以下であったが、部活動やサークル、地域活動やボランティアの2つの変数との単回帰分析では、t値が有意水準で2を超えていることが確認できた。
2.産学官連携の取り組みへのニーズに関する調査
次に、ちば産学官連携プラットフォームの事業を企画する上で、その検討材料とするために、本調査では学生のニーズを把握した。 「単位互換」の運用に関するニーズについては、「自分の大学・短期大学では開講されていない授業について、千葉市、市原市に所在する他大学・短期大学が|開講する授業を受講できるとすれば、受講することに興味がありますか?」という質問で調査を行った。 その結果、最も多かったのが「どちらかといえば興味がある」(35.19%)であった。肯定的な意見を合計すると44.07%で、否定的な意見(27.78%)を15ポイントほど上回っている。また「どちらともいえない」と回答した学生が28.15%であり、今後、「単位互換」の取り組みに関する情報を手にし、また単位互換のメリットを理解することができれば、肯定的な意見が増加する可能性がある。この点で、ちば産学官連携プラットフォームとしても、単位互換の取り組みを、学生にとって、どのようなメリットを享受することができる形で展開をしていくのか、ということを検討していく必要がある。
(1)単位互換に関するニーズ
2020年に開催される東京オリンピック、パラリンピックへのボランティア参加に関するニーズについては、「2020年東京オリンピック・パラリンピックの大会ボランティア、都市ボランティアに参加することに興味がありますか?」という質問で調査を行った。 その結果、最も多かったのが「どちらかといえば興味がある」(28.89%)であった。肯定的な意見を合計すると47.78%で、否定的な意見(28.89%)を19ポイントほど上回っている。また「どちらともいえない」と回答した学生が23.33%であった。この背景には、短期大学の学生にとっては、現在の1年生は2020年には短期大学を卒業し、社会人になっていることが挙げられる。 大会ボランティアや都市ボランティアの募集は、千葉県では本年9月に募集が始まり、年内には募集が締め切られる予定である。またオリンピック、パラリンピックの開催期間には、実習等の期間と重なる可能性もある。オリンピック、パラリンピックの関わり方について、ちば産学官連携プラットフォームとしても検討し、学生の興味・関心を醸成していくことが課題である。
(2)2020年の東京オリンピック、パラリンピックへのボランティア参加に関するニーズ
「地元企業への就職」の促進の観点から、本調査では、「あなたは千葉市内に本社や事業所がある企業、中小企業のことを知っていますか?」という質問を通して、地元企業の認知度について確認をした。その結果は、「全く知らない」が36.30%で、「どちらかといえば知らない」が24.07%と、60.37%が否定的な意見であった。一方、「よく知っている」、「どちらかといえば知っている」の肯定的な意見は11.48%に留まった。この点から、地元企業のことを知る機会、情報を得る機会を設けることを、ちば産学官連携プラットフォームとして取り組んでいく必要性を再確認することができた。
(3) 地元企業の認知度
最後に、学生生活の満足度について、「あなたは、大学生活に満足していますか?」という質問について確認した。結果は、「どちらかといえば満足している」が43.70%、「大変満足している」が15.93%であり、合わせて59.63%と、約6割の学生から肯定的な意見を得ることができた。また「全く満足していない」、「どちらかといえば満足していない」の否定的な意見は合計で8.89%と1割以内に収まっている。今後、「高等教育の魅力化」を目標にちば産学官連携プラットフォームの事業を展開していく上で、より学生生活の満足度を高め、肯定的な意見の割合を増加させていくことが必要である。
(4)学生生活の満足度
3.総括コメント
本調査「大学生の産学官連携事業への参画促進のための基礎的調査」は、千葉市・市原市にキャンパスが所在する11大学・短期大学で構成される「ちば産学官連携プラットフォーム」は、以下の2点を目的に実施された。
- 日頃、学生が学修時間、サークル、アルバイト、地域活動等に充てている時間について調査することにより、今後の産学官連携の協働事業を企画する上で、適切な「活動量(時間)」を検討し、自治体や産業界との協議の参考にすること。
- ちば産学官連携プラットフォームの事業を企画するために、学生のニーズを把握すること。
本調査の結果が示唆することは、学生の授業に係る学修時間には課題があるが、一方で、必ずしも部活動やサークル活動、地域活動やボランティア、アルバイト等のエフォートも大きいわけではないということである。複数の大学・短期大学が自治体や産業界と連携し、協働事業を展開する上で、一定のエフォートの中で、高いインパクトを持つ産学官連携・協働の教育プログラムを設計していくことが重要であり、かつ、授業との連関性(リンケージ)を持たせ、学生の授業に係る学修時間との効果的な接続を企図する必要があると言える。 また、ちば産学官連携プラットフォームの事業を展開していく上で、学生のニーズ等を反映させながら、学生にとって魅力的なプログラムを提供することが、結果として学生生活の満足度の向上に結び付いていくことが考えられる。大学生の産学官連携事業への参画促進のための基礎的調査アンケート結果報告書.pdfPDFファイル 512.6 KBダウンロード大学生の産学官連携事業への参画促進のための基礎的調査アンケート回答票.pdfPDFファイル 392.8 KBダウンロード